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カテゴリー別アーカイブ: 正木の家

正木の家

カテゴリ名: 正木の家

高齢者が病院や介護施設に入ると、せん妄を発症するリスクがあります。日常生活が大きく変わることで混乱を引き起こしてしまい、特に夜間に悪化すると言われています。2月末に正木の家に入所したU様。入所3日目くらいから夜間眠ることが出来なくなってしまいました。

2、3日眠れない日を過ごし、1日寝るようなパターンで、眠れない日は夜じゅう廊下を歩き回り、ありとあらゆるスイッチを押しまくる。他者様の部屋のドアを開けまくる。ご自分の部屋の物をいじり倒す。しまいには火災報知機を押してしまい、消防車と警察を呼んでしまう始末。正木の家の夜勤さん、本当に根気強く対応してくれていました。

そして1か月程立った頃、朝までぐっすり眠れる日が多くなってきました。今では、ほぼ毎晩のようにゆっくり眠ってもらえるようになりました。U様が正木の家の環境に馴れてきたと同時に、職員さんの頑張りのおかげだと思います。日中の職員さんは、夜寝られるようにと、毎日散歩に連れて行くなど、活動量を増やしてくれ、夜勤さんは眠れない時の対応策を考え、工夫を凝らし、諦めずに対応してくれていました。これこそが正木の家のいいところです。

入居者様が入院をすると、必ずと言っていいほどせん妄を発症し、大体の場合、睡眠薬、向精神薬を服用された状態で戻ってきます。環境の変化に戸惑うのは当たり前の事です。特に認知症の方は、変化にうまく対応することができません。もちろんたくさんいる入院患者さんの対応で、大変なのは理解します。しかし大変だからとすぐに薬に頼るのはやっぱり理解ができません。もう少し根気強く対応してくれてもいいのに! といつも思わされます。

根気強さを持ち合わせた、正木の家の職員さんを見習ってほしいくらいです。今回、職員さんの丁寧な対応で、U様のせん妄も落ち着き、ゆっくり休むことが出来るようになりました。認知症介護のプロが揃う正木の家。私が言うのもなんですが、いいところです!  (あすか)

正木の家4月

カテゴリ名: 正木の家

先日、毎年恒例の餅つき大会を開催しました。

今年の餅つき大会は、子ども食堂とコラボでの開催で、たくさんの子供達が来てくれました。

子どもたちの中には、餅つきを初めて体験する子もたくさんいて、とても良い経験になったことと思います。私が子どもの頃は、おばあちゃん家で餅つきをしたり、小学校で体験する行事があったりと、餅つきに触れる機会もけっこうあったのですが、今の子ども達には、なかなかそんな機会もないようです。

餅つきは地域の人が集まり、皆で協力して餅を作り、ついた後は一緒に食べる。地域の人たちの交流を深めることの出来る、日本の素敵な伝統のひとつです。そんな素敵な行事がなくなりつつあるのは少し悲しい気がします。実際、こうして餅つき大会をするとなったら、ご近所のご年配の方が張り切って手伝って下さり、そして子供達もこんなに沢山来てくれます。

入居者様も、お餅は危険との声もありますが、皆様本当に美味しそうに食べてくれる。こんなに老若男女一緒に楽しめて、日本の伝統文化を守るイベントは、そうそうあるものではありません。感染症や食中毒を気にするのも大切ですが、やっぱりなくしてほしくない日本の行事です。

入居者様も、みんなお餅が大好きなのだから、食べたらいいと私は思います。職員がしっかり見守っていれば、危険は回避できますし、好きなものは上手に食べられます。リスクにばかり目を向け、出来ないと決めつけ、それを理由にやらないのは、とても寂しい事です。子どもから高齢の方、そして認知症の方々も、みーんなが楽しめる餅つき大会。

正木の家では、ずーっと継続していきたいなっ!と思っています。

あすか

正木の家3月

カテゴリ名: 正木の家

2月24日、新しい入居者様が入所されました。

75歳の男性U様です。正木の家の近所にある、うどん屋さんのお父さんです。お店を経営していただけあってハキハキとしたお父さん。朝、「おはようございます」と挨拶すると、「おお!ご苦労さん!」と威勢よく返してくれます。

そしてうどん屋さんなのに麺が嫌い。お昼は従業員が賄を食べている中、いそいそと外に食べに行っていたそうです。正木に来て初めての麵料理の時は職員もドキドキ。食べてくれるか不安ながらにお出しすると、躊躇することなく食べ始め、「うん。おいしいよ。」と言いながら完食。なんなら他の入居者様の残したうどんにも、いつの間にか手を伸ばし、それも完食。どうも心配する必要はないようです。

読書、カラオケ、麻雀、パチンコと趣味も多才。持参の本を破りながらもずっと読んでいるし、麻雀も牌を渡すと、手でいじりながら「東南西北白發中」と繰り返し言われています。正木のカラオケではビブラートの利いた美声も聴かせてくれるし、とってもキャラの立った素敵なお父さんです。

時折厳しいことを言われることもありますが、根はやさしい人。ご家族がお父さんに接する姿や、言葉かけを見ていてもそう感じます。きっといいお父さんだったことでしょう。

「 今まで頑張ってきてくれたから、これからはゆっくり過ごしてほしい・・」と願うご家族の思いのとおり、正木の家で穏やかな日々を過ごしてもらえたらと思います。

あすか

正木の家1月

カテゴリ名: 正木の家

明けましておめでとうございます。正木の家、14年目がスタートです。

今年も正木の家は、みんなで笑って福が来る、そんな1年にしたいと思います。

昨年は悲しい出来事がありました。11月にはお父さんことK様、そして12月21日、お父さんと同じ年、同じ月に入所されたU様が永眠されました。正木の家に入所し10年と1か月、長い月日を一緒に過ごしたお二人との別れは本当に悲しく寂しい出来事でした。

入所当初のU様は、綺麗な黒髪と皺のない若々しいお肌に、大き目のメタルフレームの眼鏡をした、まさに昭和マダムのようなお姿でした。パッと見、厳しそうな容姿でしたが、いつもニコニコして、皆様の話を聞いていたのを憶えています。他の入居者様の世話も良くやいて下さり、思い通りにいかないと、時々怒ってプイっと居室に行かれたりもしていました。歌が上手で、塗り絵も得意で、芸術センスにも長けておられ、「上手ですね」と褒めると、嬉しそうに照れ笑いをしておられました。

言葉は多くはありませんでしたが、感情表現が豊かでとっても可愛らしい方でした。認知症の進行とともに身体機能が低下し、嚥下の状態が悪くなってからは何度も誤嚥性肺炎や、てんかん発作を起こして入院する日々を繰り返していました。それでもいつも奇跡の復活を遂げ、元気に正木の家に帰ってきてくれていたのです。

昨年の12月も、どこかでまた元気になってくれるのでは?と、望みを捨てきれずにいました。しかし、日に日に減っていく食事量と、苦しそうに息をする姿を見ていると、復活を望むこと自体がU様にとって辛い事のようにも感じていました。元気になってほしい、前みたいに素敵な笑顔を見せてほしいと思うのと同時に、早く楽になってほしいとも思うのです。

最後は「また明日ね」と声をかけて帰ったその日の夜でした。お疲れさまでした。安らかに永眠されますようお祈り申し上げます。

あすか

正木の家12月

カテゴリ名: 正木の家

12月1日、新しい入居者様が入所されました。76歳の男性入居者E様です。

今の正木の家では、唯一の70代。病院で認知症と診断され、ご自分でのひとり暮らしは不安ということで、施設入所を希望されました。

要支援2で、まだまだひとり暮らしが出来そうなのですが、ご自身には不安の方が大きかったようです。ずっとひとり暮らしだったので、集団生活は?、今までのように自由の利かない生活はどうなんだろう?と不安がありました。ですが、ご本人は「前の生活とそんなに変わらんわ。」と特に気にしていないご様子。  「えっそうなの?」と安堵と共に逆にビックリ。

そんなE様。今までI様にばかりお願いしていた、お皿拭きや洗濯たたみ等のお手伝いも、嫌な顔せず手伝って下さいます。掃除機がけも、とっても綺麗にしてくれ、なんならタンスの上まで掃除機をかけてくれるほど。私のお買い物にも付き合ってくれ、重たい荷物も持ってくれます。頼りになるクールなナイスガイです。一見物静かなようですが、しゃべり出すとどんどんお喋りが進みます。ご自分の事もどんどん話してくれて、時折みせる笑顔がまたまたナイス。

まだ入所して数日。これからどんな一面を出してくれるのか楽しみです。

あすか

正木の家11月

カテゴリ名: 正木の家

11月7日(木)毎年恒例の秋の遠足に出掛けました。今年は「セントレアに飛行機を見に行こう!」です。

いつもの観光バスに揺られ30分。 H様、まさかの車酔いというトラブルもありながらも無事到着。

着いたらまずは腹ごしらえ。セントレアのフードコートへ向かいます。毎年カレーが一番人気ですが、今年は海鮮丼が人気です。皆様一人前をペロリと平らげ、 W様はおしぼりまで平らげようとする始末。みんなおなか一杯でまったりしているところに、医務室で休んでいたH様が無事帰還しました。

帰ってくるやいなや、バスで散々吐いていたとは思えぬ食欲で、海鮮丼をすごい勢いで口に運んでいました。元気になって何よりです。

その後はスカイデッキで飛行機を観たり、家族にお土産を買ったりとで、第1ターミナルを満喫。

さてお次はフライト・オブ・ドリームズに移動です。到着して1階に降りると、圧巻のボーイング787がお出迎えです。飛行機をバックに記念写真だ!と、みんなで準備をしていると、「あれ?社長いないよ」と。

社長、飛行機の周り徘徊です。一人でフラフラしている姿を見つけ、そしてみんなに怒られる。社長らしからぬそんな所がうちの社長のいいところ。ってなわけで無事全員の集合写真を撮ることができました。

その後はいつものおやつタイムを満喫しバスにて帰所。帰り道、私は爆睡だった為、バスでの出来事はちょっとわかりませんが、 W様が爆睡していた事だけは、バッチリ写真に残っていました。そんなこんなの今年の遠足。

H様の車酔い、社長の徘徊・・とトラブルはありながらも、セントレアを大満喫することができました。来年はどんなトラブルが!?乞うご期待!

あすか

正木の家10月

カテゴリ名: 正木の家

9月はしょっぱなからコロナ騒動勃発です。入居者様6名、職員4名がコロナに感染。1名感染後、あれよあれよという間に感染が広がってしまいました。入居者Kさんに関しては入院、他の5名の方は重症化することなく5日間の隔離後、いつもの生活に戻ることができました。

Kさんはというと、コロナの症状はすぐに落ち着き、食事を開始したものの、拒否する日が続いているようでした。2口3口、口に入れるとその後口を一文字に閉じ、首を振ってしまうようです。正木でも時々やっていた「食べたくない」の意思表示です。そんなこんなで食事も止められ、中心静脈栄養に切り替わりました。その後もSTさんが入ってくたりしていたようですが、あいかわらず拒否の毎日。

職員さんも日替わりで、プリンやら水羊羹やらを持って訪問してくれたのですが、傾眠が強かったり、首を振るばかりで食べてもらえません。結局、食事が摂れない状態では、グループホームへの帰所は難しく、退所というかたちになってしまいました。正木の家に来て十年、最初は帰宅願望がひどく、暴力行為もありました。それでも職員や外部の人など、会う人、会う人の心を掴むKさん。みんな、お父さんことKさんが大好きでした。最後の時まで正木の家で過ごしてほしかった。最後を看取らせてもらいたかった。それが正直な気持ちです。残念な気持ちやら、どうにも悔しい気持ちが残ります。

でも本当は、お父さんが幸せに、楽しく過ごせるのなら正木の家でなくてもいいのでしょう。会いたくなったら会いに行けばいい。私たちが唯一、お父さんに出来ることは、残りの日々を楽しくハッピーに過ごしてもらえるよう願うことなのでしょう。これからもお父さんに、ハッピーな日々が待っていますように。また会いに行くからね。

あすか

正木の家9月

カテゴリ名: 正木の家

八月、正木の家夏祭りが開催されました。毎年地域の方をご招待し開催している夏祭り。今年はたくさんの子ども達が遊びに来てくれ、会場がごった返すほどの大盛況っぷりでした。

入居者様も浴衣で着飾り、お祭りに参加。ご家族と一緒に、たこ焼きやフランクフルト、カレーなどを頬張っておられました。松原の家のM様も参加され、「美味しいよ!コクがある!」と言いながら、とっても沢山召し上がっておられました。帰る際も嬉しそうにみんなと握手。いつもの選挙活動をして帰って行かれました。

入居者様、ご家族、松原の入居者様、地域の子ども達から高齢者の方々、皆様が正木の家に集まり、楽しそうに交流している姿を見て、「これこれ!これを望んでいたんだよ!」と、嬉しくなりました。

開所して13年。始めの夏祭りはなかなか地域の方も来て下さらず、通りすがりの子どもに声を掛けても怪訝な顔をされる、そんなスタートでした。地域の行事に参加したり、月壱屋を始めたり、子ども食堂をスタートさせたりと、少しずつ地域の方との交流が増え、今に至っています。いつまでもこれが途絶える事のないよう、そしてますます入居者様にとっても、地域の方々にとっても、正木の家がより良い場所になれるよう精進あるのみです。

今年の夏祭りを終え、正木の家の職員さんが反省点や来年に向けての課題をたくさん出してくれました。みんなもっと良くしようと考えてくれています。頼もしい限りです。来年の夏祭りは、きっともっと素敵な夏祭りになることでしょう。

あすか

正木の家8月

カテゴリ名: 正木の家

正木の家のおしゃれ大好きM様。若いころからお買い物が大好きで、しょっちゅう松坂屋に出掛けては、お買い物を楽しんでいたそうです。

友達とよく旅行にも出かけていたようで、旅行の度にお洋服からバッグまで全て新調していたというこだわりっぷり。今でも毎日素敵なお洋服をお召しになっています。

私が柄物の洋服や明るい色の洋服を着ていると、はっきりと発語ができないM様が「これ素敵ね」と言わんばかりに、服をちょんちょんっと触ってにっこり微笑んでくれたりもします。いつまでもおしゃれ心を忘れない正木の家の素敵女子です。

先日、皆様で正木小学校の盆踊りに出掛けました。やぐらから少し離れたところに皆で並んで、子供達が踊る様子を見ていました。ときどき職員と一緒に踊ったり、音楽に合わせて手拍子したりと、盆踊りの雰囲気を楽しまれていました。もっと盆踊りの雰囲気を楽しんでもらおうと、 M様と一緒にやぐらの近くに行くと、いつも月壱屋にご来店下さる方が声を掛けて下さいました。

毎年やぐらの上で踊られる女性会の方です。「今年は浴衣を新調したの」と、浴衣姿をみせて下さいました。するとM様、浴衣をちょんちょんと触ってにっこり。素敵な浴衣を褒めておられました。些細なことですが、はっきり発語のできない認知症の入居者様と、地域の方とのコミュニケーションがこういった形で取れたことをとても嬉しく感じました。

やっぱり女性はいくつになってもおしゃれに関心があり、素敵なものには敏感です。それは認知症になっても変わらないのです。だって正木の家の女性たちもみんな素敵なものが大好きだし、若者に負けないくらいのキラキラ女子ですから。

あすか

正木の家7月

カテゴリ名: 正木の家

令和4年からの身体拘束適性化委員会、令和6年からは、虐待防止委員会の設置が義務づけられました。身体拘束は年4回、虐待は年2回、委員会の開催が義務となっています。

正木の家も2ケ月に1度行っている運営推進会議内で委員会を開催しています。現状、正木の家では身体拘束も虐待もない為、これってちょっとグレーゾーンなのでは?というケア事例を出して、外部の方の意見を頂くようにしています。

どんなものかというと、身体拘束、虐待とまでは言えないが、それになりうるかもって状況です。例えば、「ちょっと待って!」や「座ってて!」と言って行動を制限するスピーチロック。まだ自分でできるのに、様々な理由から介助してしまう過剰介助。声掛けをせずにいきなり介助する等。悪気はないけど、ついやってしまっていたかも・・と思いあたるかと。

委員会を開催し、様々な方々からのご意見を頂き、最終的にたどりつく結論はいつもこれです。それを行う理由が何なのか、入居者様の気持ちに寄り添ったケアなのか、今のケアが適切であるのか、これを常に考え、検証を繰り返していくこと。グレーゾーンが常態化してしまうと身体拘束、虐待になる。だからこそ今のケアが適切であるのかを常に考える必要があるということです。

つい言ってしまった、ついやってしまった。思い当たる節がたくさんあります。ほんの少しの気のゆるみだったり、手抜きだったり。気持ちの余裕のなさから出てしまう「つい」。  職員だって人間ですからそんなこともあります。でもこの「つい」に気づき、「しまった!」  と思い反省する。結局はこの繰り返しなのだと思います。そして正木の家はチームです。チームでお互いに気づき合うことができます。チームで協力し、みんなで考え、これまでのように身体拘束、虐待のない正木の家であり続けたいです。

あすか